なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー
【side 翼】
悲しそうな表情で電車を見ていた夏生ちゃんを電車のドアに寄りかかって思い出す。
あのゲームの時から握っていた左手を開くと、そこには何もない。
コートのポケットに手を入れて出せばアパートの鍵が出てきた。
「…深侑……」
そう彼の名前を呟く夏生ちゃんを見た瞬間に確信してしまった。
やっぱり彼女の隣にいるのは僕じゃないと。
「……茜、お前の言う通りだったよ」
『翼!あんた夏生のこと好きでしょ?』
「ぶっ!?な、なんで分かったんだよ…!?」
『コーヒー吐かないでよ汚いな!
そりゃ見てれば分かるよ!
ほぼ毎日あたしの家に行きたがるし、手伝うとか言って夏生になにかと接点持とうとしてるし』
「……っ
あー、そうだよ。好きだよ。
だからお姉さん、応援してくれよ?」
『やーだね!』
「ひどいな即答かよ!」
『ほんとは応援してやりたいけどさ……』