キライ、じゃないよ。
「どけよ、ブス」

「……え?」


何を言われたのか分からない、そんな表情の田淵を嘲るように笑って見た。


「どけって言ってんの。……なんなの、お前。自分がどれだけ汚い事してるか分かってねぇの?恋人でもない男に股開いて……ビッチかよ。相手が欲しいなら、ほか探せば?」


見る間に田淵の顔が青ざめて行く。

同情する気も起きなかった。

未だ跨ったままの田淵の身体を脇に押し退け、そして開けた視界の中に、いるはずのない人物を見つけて愕然とした。


「護……⁉︎」

車の外にいた護としっかり目が合った。

途端弾けたように走り出した彼女はあっという間に見えなくなる。


「くそっ!なんでいつもこうタイミングが……?まさか……」


俺の隣で呆然としている田淵の肩を掴んで揺さぶった。


「おいっ!まさか、お前護までここに……」

「きゃあっ、ごめんなさい、ごめんなさいっ、お、怒らないで……。私じゃないよ。私は原川さんのいう通りに……っ、」


俺の剣幕に急に怯え、ガタガタと震えだした田淵は、俺の知る気の弱い自信のない高校の時と同じ田淵だった。

多分こいつは、こんなことできるタイプじゃなかった。

全部誘導されただけ……。

だとすれば、確かめるべきことが1つあった。


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