キライ、じゃないよ。
樫が私を連れてきたのは、樫の会社の駐車場だった。

樫の車が停めてあって、それに近づく事でさっき見た2人のことを思い出して胸が軋んだ。


「助手席に乗って」

「う、ん」


頼まれたって、後ろにだけは乗りたくない。

今この車に私を乗せる樫を無神経だなと思ってしまう自分が嫌だ。

私だって、樫に顔向けできないことをしたのに。

私が樫を責める資格はない。

けれど。


「ごめんな、今俺の車になんか乗りたくないだろうけど、少しでも早く帰りたいから我慢して……」


樫はそんな私の気持ちをちゃんと分かってフォローしてくれる。


「別に……」


いいよとは言えなかった。

小さいな、私。

せめて車内だということから意識を逸らしたくて、窓の外を眺めていた。

信号で車が止まる。

ちょうど視界に、歩道を歩く恋人達が目に入った。

道中で抱き合ってキスをするその様子に慌てて視線を逸らす。

羨ましいというか、見られて恥ずかしくないのかな?とか思ったりする。

私ってホント、ロマンチックから程遠い思考の持ち主なんだと凹む。

だって……恥ずかしいじゃん。人前とか絶対無理だし。

皆んな羞恥心とかそういうのどこに落としてきちゃうわけ?
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