キライ、じゃないよ。


「護?もう戻ってもいいか?」


キッチンから声を掛けられて、大丈夫だと答えると、樫が顔を覗かせてホッとした様子で近づいてきた。

近づいてきて……ベッドに腰掛ける私を見下ろす。

腰を折って顔を寄せる彼を見上げた。


「えぇと?」

「キス、しますよ?」

「な、い、いちいち断らないでよ。恥ずかしいし、結局Noって言葉は聞き入れないくせに」

「それならお前がもう少し察してくれよ。そんな風にガチガチになられたら、こっちが手を出しにくい」


そういうものですか、ね。

うーん、と考え込む私の視線は樫から離れていて、だから全然気づかなかった。

気付いた時には樫の指が顎に触れていた。


「んんっ……」


仰かされて簡単に唇を塞がれて。雰囲気もクソもあったもんじゃない。

しかも背もたれのない状態で、上からの圧力はかなり体勢的にキツイ。

両腕で支えきれず、ベッドに倒れこんでしまった。

樫は辛うじて二の腕で自らの体重を支えて、私の上にのし掛かることだけにはならなかった。


「大胆だな、おい。朝から誘われてんのか、俺は?」

「ち、違う!」

「おれは、いいよ?でも、護はキツイんじゃねぇの?なんせ初め……」

「ばっ、バカ!変態、エロガッパ!朝から卑猥な言葉口にしないで!」


枕を掴んで思い切り振り回す。

信じられない!そういう事、わざわざ言う?





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