キライ、じゃないよ。
「そうなんだ!良かったね。樫くんも、皐月さんも昔から2人はお似合いだったから」
裏なんか欠片もない清々しい表情で、八田は笑う。
「へへっ、八田くん。ありがとう」
護まで八田の祝福の言葉を素直に喜んでいる。
なんだよ、それ。気にしてんのは俺だけかよ。
とことん情けない気持ちになりながら、目の前で2人が仲良さげに話すのを見ていた。
「じゃあ、俺戻るね。仕事中だった」
「うん。じゃあ、八田くんバイバイ。頑張ってね!」
八田に向かって手を振る護。
護は、俺みたいな心の狭い人間を選んだこと後悔しないのか?
でも、もし後悔したとしても今更この手を離すつもりはないけど。
護の手を掴んだままだったことを思い出し、ギュッと握りしめた。
「遊園地とか、久しぶりなんだ。先ずはジェットコースターとかかな?」
俺の不安な気持ちなど気付いてもいないのだろう、護の楽しそうな笑顔にほんの少しホッとした。
「護、俺といて楽しい?」
「楽しいよ。樫は?」
躊躇いなく答え、同じように尋ねてくる。
俺も楽しいと答えた。
こうして護の隣にいるのは自分なのだ。護は他の誰かではなく俺を選んでくれた。
こんな風にグジグジと悩むなんて、俺らしくないか……。