キライ、じゃないよ。
「樫のことも、協力してやっから」

「は?」


いきなり何を言い出す。
おれの何に協力するって言うんだ。

胡散臭げなおれの視線に山近は再びニヤニヤと笑う。

もう一回手羽先の骨ぶつけてやろうか?


「皐月も来るかもよ」


山近の言葉に俺は持っていたビール缶を落としてしまった。


「うわ、ティッシュ、ティッシュ!」


見る間にカーペットに泡立つ液体のシミが広がっていく。

山近はティッシュケースを抱え、シミの上からティッシュを数枚置いては拭き取っていく。


「動揺してる樫見たの久しぶりだわ。普段クールだ無表情だって言われてるのにな」

「う、うっせ。貸せよ、俺が拭く」


ティッシュケースを奪って、山近とバトンタッチ。


「あの時ぶりだわ」

「あ?」

「皐月から『私も樫の事なんて好きじゃない』って言われた時だよ」

「山近、お前マジで追い出すぞ」

思ったよりも低い声が出た。

山近は怖い怖いとこぼしている。

ビールのシミを綺麗に拭き取ってから、改めて新しいビールを2本出し山近にも渡した。


「怒るなって。からかってるわけじゃねぇっての。俺はお前のこと心配してんの」


ビールを受け取りプシッと音を立ててプルタブを押し開けた山近が、遠慮がちに呟いた。

本気で外に出される心配でもしているのだろうか。
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