キライ、じゃないよ。
「樫くん?」


目の前で訝しげな視線を向けてくるのは、高校時代のクラスメイト。

原川 恵麻(はらかわ えま)だった。

こんな俺に告白してくれたことのある女子の1人。

あの頃も高校生にしては少し派手な顔つきをしていた彼女は、25歳になっても他と比べると少し濃いメイクが派手に見えた。

そう言えば、護もメイクをしていたっけ。

桜みたいな色のルージュが護にとても似合っていた。

なんていうか……着ていた服もそうだけど、ふわふわした柔らかいイメージが護っぽいというか……。


「おーい、樫くーん」

「え?あ、悪い……ちょっと考えごと」

「ちょっとぉ、こんな綺麗どころ独り占めして上の空って失礼だよー。ねぇ?」


原川が笑ってそう言いながら、隣にいた女子に同意を求めている。

確か……田淵って名前の女子。3年間1度も同じクラスにはなった事はなかったが、委員会が一緒だった記憶がある。


「ほ、ホントだよ。」


綺麗どころ、という言葉に謙遜するような戸惑いを帯びた声に「悪い」とだけ返した。

昔の田淵は影の薄い印象だった。メイクをすることで少し大人びた印象に変わった彼女も、隣にいる原川と比べればまだまだ地味だと思う。

声をかけてきてくれたことには、素直に嬉しいとは思う。

けれどそのせいで護が離れていったのはいただけない。

しかも、八田に声をかけられてなんだか楽しそうに話してる護の様子がさっきから視界の端にチラチラと映って無性にイライラする。


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