キライ、じゃないよ。
ホテルが用意したいちごのスパークリングワインを飲んだせいか、護の赤く色付いた頬に、ほんのり潤んだ目をさっき見たせいか、近付く男があんな護を間近で見ているのだと思うと正直冷静でいられない。

原川に文句を言われても、護が気になって仕方がない。


「全く……昔から誰かさんしか見えてないのよね」

「え?」


原川がポツッと落とした言葉が、なんとなく耳に残った。


「樫くんさ、今でも皐月さんのこと気に入ってるの?」

「……は?」

護を呼ぶ幸島の声が聞こえてそちらを見れば、八田は護とスマホを見せ合っていたが、すぐに離れていった。

連絡先を交換したんだと容易に想像できた。そのことにもイライラしたが、それでも八田が離れたことには正直ホッとして、改めて意識を前にいる原川に戻す。


「で、なんだって?」

「もう。全く仕方ないなぁ。ここにも今でも一途に樫くんのことを思い続けている女子がいるっていうのにさ」

「ちょ、原川さんっ」


慌てた様子で原川の腕を引く田淵。

それって田淵のことなのかもって、鈍い俺でも気づける反応。


「ねぇ、また同窓会しようよ。今度はもっと少ない人数でさ。樫くん、連絡先おしえてよ」


こちらの返事を待たずにスマホを取り出し、アプリを起動する原川。

流されるまま連絡先を交換する。


「田淵ちゃんも、ほらスマホっ」


「え、え?い、いいのかな?私まで……」


遠慮がちに見上げてくる田淵だけど、ここで嫌とも言えない俺は、彼女に向けてスマホを出した。



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