キライ、じゃないよ。
結局あれから、「ついで」という流れで数人の女子や男子達と連絡先を交換した。

まぁ、普段から携帯される頻度の少ないプライベート用のスマホだから別にいいけど。


「なによ、樫くんまで同窓生相手に営業?」


ようやく1人になれた俺が、壁際でウーロン茶を飲んでいると、幸島の呆れた声音が横から振りかかる。

顔を上げれば、幸島の隣に護と山近までいる。


「ち、違うっての」

「じゃあ、プライベートで教えたんだ。相変わらずおモテになりますこと」


幸島の言葉に、隣の護が眉根を寄せたのが見えて、慌てて否定する。


「べ、別に俺から聞いたわけじゃない」


言い訳めいた言葉を何故か護に向けて言ってしまう。

案の定戸惑う護の視線から目を逸らす。


「……しばらく、鳴り止まないかもよ」


護までからかいを含んだ声で言うから、ちょっとカチンときた。


「護だって、八田から連絡来るんじゃねぇの」


行った後で、しまったと思ったがもう遅い。

2人が連絡先を交換しているところを盗み見ていたのがバレバレだ。


「じゃあ、お前らも交換しとけばいいじゃん」


気不味い雰囲気になりかけた瞬間、サラリと山近が提案した。

どの繋がりで「じゃあ、」になるのかは分からないが、せっかくの助け舟を無駄にする気はない。
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