キライ、じゃないよ。
「とりあえず……今回は、護の顔を立てて八田との飲み会付き合うよ」

「いい、の?」

「断ることも、1人で行くことも、もうできないんでしょ」

「……ごめん」

「八田とはこれきりにして、樫とのこと前向きに考えるなら……許す」

「……香って、そんなに樫贔屓なの、どうして?」

「えっ、いや、まぁ。護に幸せになってもらいたいのは勿論だし……旦那同士が友達なら結婚後もなにかと都合がいいじゃない?」


なんとも未来(さき)の構想まで語られてしまった。

自分がここまで恋愛に縁がなかったのは、樫のことを引きずってることだけが原因とは思わないんだけど……。

ただ、臆病にはなっているかもしれない。誰かと付き合うことになったとしても、どれだけ仲良く上手く付き合えていると思っても、きっとそれは独りよがりなのかもしれないと……そう考えてしまう日が来そうで…。

なんて、恋愛から逃げていた臆病者の言い訳でしかないのだけれど。


「護とは付き合い長いけど、未だに樫以外の男の名前聞いたことないからさ。正直不安にもなるじゃん。護可愛くてモテるのに、難攻不落な要塞の中にいるみたいに見えるんだもん」

「……私、そんなに壁作ってた?」

「2人で飲みに行くじゃない?男が声かけようとするじゃない?護はねぇ、「近づいてこないで!」ってオーラ見えるらしいよ」

「えっ!嘘、誰情報よ」

「私の元カレ達情報。2人でいるときに、最初に目が行くのは私じゃない、護なのよ。だけど護は絶対距離を詰めさせてくれないから、私に来るのよ」

「なに、それ。香、そんな相手と付き合ってたの?」

「勿論全員がってわけじゃないよ。中にはってこと。まぁ、そう言うの分かった上で、お財布がわりにして来た元カレも何人かいたから、護が気にすることじゃないよ」


あっけらかんと言われて、彼女の恋愛遍歴をなんとなく思い返して、付き合いが短い理由が初めて分かった気がした。
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