キライ、じゃないよ。
「えっ……樫?山近くんも。どうして……」


俺と山近に気付いた護は、心底俺たちの存在に驚いた様子だった。

八田が、護達と飲みに行く約束をした土曜日。

俺と山近は偶然を装って、幸島から聞いていた店を訪れた。


「偶然だな、俺、たまにこの店に飲みに来るんだよ」


昼間は自然食レストラン、夜はお酒も出す少しお洒落な内装のこのレストランは、偶然にもなんども俺が利用したことのある店だった。

だから時々飲みに来るというのもあながち嘘じゃない。


「同窓会ぶりだね、樫くん。山近くんも……」


八田は急に現れた俺達に嫌な顔1つせず、穏やかな笑顔を向けて来る。


「そうだな。同窓会じゃああんまり話せなかったけど、八田結構変わってたから驚いた。もっと色々と話したかったんだぜ」

「そう言ってくれて嬉しいよ。今日は2人?他にもいるの?」

俺らの後ろに視線を向けながら、尋ねてくる八田に2人だと答えると、一緒にどうかと誘って来た。


「皐月さんも、幸島さんもどうかな?みんな知らない顔じゃないし、久しぶりに高校時代の話もしたいよね」


勿論女性軍に断りを入れるのを忘れずに。

その言葉に護は一瞬戸惑った様子を見せ、隣にいた幸島はバツが悪そうに愛想笑いで護に返事を任せたようだ。

なんせ、幸島は俺達が乱入する事を事前に知っていたのだから。

護の様子を見るに幸島は何も話していないのだろう。

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