キライ、じゃないよ。
「……八田くんがいいのなら」


そう答えた護の視線は、真っ直ぐに八田へと向かっている。

俺達が目の前にいながら、俺らを見たのは最初に俺達を見つけたあの時だけだ。

迷惑って事かよ。

驚きこそすれ迷惑だと思われることは、考えていなかった。

護のその反応に、正直減り込むくらいに凹む。

そんなに俺のことキライなのかよ……って、当たり前か。

嫌われる事をしたのは俺だもんな。


「樫?座れば?」


ぼうっと突っ立ったままでいた俺の隣で、山近が店員に話して椅子を1つテーブルに持ってきて肘で小突いた。

4人掛けのテーブルに座っていた3人に見上げられて、慌てて八田の隣に座る。

山近は幸島の近くに椅子を置いて座った。

俺の目の前に座っていた護が、「樫達は何を飲む?私達もう頼んでるから」とメニューを渡してくれる。

同窓会の時のフワフワした印象のカッコとは違い、ニットにスキニーのジーンズとカジュアルな服装に、今日は髪を下ろしている。

桜色のルージュだけが、あの同窓会の時と同じだった。

今のカッコも可愛い。

八田の為に化粧したのかって思ったら、胃の辺りがジクジクした。

この場に乗り込んだ事を後悔したくなる。

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