キライ、じゃないよ。
「宏也、なにそれ。あんたも他の女子から欲しいと思ってるわけ?」

「香⁉︎いや、俺のことじゃねーから。他のやつらの気持ちを、この鈍感無神経な男に知らせてやって……ぐえっ、く、首しま……」


どこから現れたのか、山近の後ろから幸島が現れて、恐ろしい位に冷たい笑顔で山近のネクタイを掴むとズルズルと引きずって行ってしまった。


「幸島怖えよ」

「香、この日の為に、手作りチョコ作ってたのよ。それをもらっておいて樫のチョコ羨んでたら、そりゃあ香が怒っても仕方ないよ」


教室から出て行く2人にこぼした声に、隣にいた護が苦笑しつつ幸島のフォローをしてきた。


「手作り?あの幸島がか……」

「あれ、知らないの?香は家庭科5だよ。前にカヌレ作ってもらったけど、すごく美味しかったもん」

「へぇ。人は見た目で判断しちゃダメだな」

「見た目って……香って結構モテるのよ。山近くんが言ってたもん。他の奴らに盗られたくなくて、慌てて告ったんだって」

「山近が?へぇ……」


俺が2人のことを知ったのは、山近が幸島に告白してOKもらった後だった。

フラれたらカッコ悪いから話さなかったって、いつかあいつが言っていたけど、そんなにマジだとは知らなかった。


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