キライ、じゃないよ。

kashi.4




煙と油の匂いが充満する店内から、護を連れ出した。

外に出た途端隣で派手にくしゃみをした護を見て、彼女がコートを着ていなかったことに気づく。

自分の左手に持ったままだった。


「護、ごめん。ほら、コート着て」

「ん」


コートに袖を通し前をぐっと寄せて、それでも寒そうに体を震わせている護を自分の車へと乗せた。

エンジンをかけてエアコンを付けたが、すぐには温まりそうもない。


「樫も、コート着なくていいの?車温まるまで着てたら?」

「いや、いい。それよりこれもかけてろ。ダウンだから少しはあったかい筈だし」


でも、と躊躇する護に強引にコートを押し付けた。


「ありがと」

「いや、俺が悪かったから……」

「別に樫は悪くないよ。それより話があるんじゃないの?」

いきなり本題に入らされるとは思わなかった。

そんなに俺と2人きりが嫌なんだろうか?

早く話を済ませて帰りたいんだろうか。


「なにか温かい飲み物買ってくる」

「私はいいよ。お肉食べ過ぎてお腹いっぱいだから」

「……そう。てか、肉そんなに食ったのかよ。俺まだ食い足りねーわ」

「……じゃあ、食べてくればよかったじゃない。可愛い女の子2人引き連れて、両手に花で食べに来たんでしょう」


なんだか意地の悪い言葉にカチンときた。

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