キライ、じゃないよ。
「護だって八田とデートしてんじゃん。焼肉屋一緒に行くほど仲良くなったのかよ」

「な、デートなんてしてない。ご飯一緒に食べにきただけだし。2人きりで会ったのだって、今日でたったの二度だもん」


ムキになって言い返す護の言葉に引っ掛かりを覚えて、さらに問いかける。


「二度って?今日と、あとはいつ?」

「は?え、と……今日、午前中」

「あとは?」

「ないよ」

「ホントかよ」


護の言葉を信じていないわけじゃない。

それに護の言葉が本当だって、実はちゃんと聞いて知ってる。


「さっきからなに?樫、自分のこと棚に上げて人のことばっかり問い質して」


俺の一方的に投げ掛けた言葉に不満を感じたのだろう、護がジロリと俺を睨む。

怒らせたのは俺だけど、睨んでてもちっとも怖くないし、寧ろ、アヒル口に萌えるわ。

これ言ったら多分余計に怒らせるのは分かってるけど。


「ごめん。俺、勝手過ぎるな」

「うん。すごく勝手だよ。でも、」


でも、と呟いたきり護は俯いて黙り込んでしまった。


「護?……でも、なに?」

「話、聞くから。だから、早く田淵さんのところに戻ってあげなよ。こんな風に他の女を連れ出したりしたら、きっと彼女不安がってる」

「は?なんで田淵がそこに出てくるわけ?」


護がなにを言いたいのか、話の意図が分からない。田淵と俺達って、なんの関係もない。



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