キライ、じゃないよ。
「か、樫?」


目を見開き、俺を見上げる護は今自分がどういう状況なのか、分かっていないんだろうな。

俺がなにを考えているか、俺の気持ちなんて欠片ほども分からないんだろう。

無理ないと思う。

分かってる。誤解させたのは俺だから、ちゃんと説明して、誤解を解いた上で、護に伝えたいことがある。

分かってるのに、護に対する苛立ちもある。

やっぱり護は、あの頃と同じように俺の事なんか好きじゃないんだろうか?

あの時、逃げればいいと言った時、護は逃げなかった。それが答えだと思ったけど、本当は驚いて動けなかっただけ?

分からない。高校の頃からずっと護の気持ちが全然分からない。

幼かったから分からなかったと思っていたけれど、大人になった今だって、俺には護の気持ちが全然分かんねーよ。

俺だって、自信が欲しい。

護に嫌われていないという自信。

好かれていないにしても、嫌われてないってそれだけでも救われるのに。


「護、俺のこと……キライ、か?」


護の目がさらに大きくなった。

驚いて声も出ないって感じだ。


「……どうして、そんなこと聞くの?」

「知りたいから」

「彼女がいるくせに……」

「だから、それは違うって……」

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