好きって言ってもいいですか?

「そういえば夏目さん?」

「うん?」

右手にハンドル、左手には、私の手を握っている。

「…麗奈は、知ってたんですよね?夏目さんが、財閥の御曹司だってこと…」

「あー…うん、バレてたね。」

「なんで私には、言ってくれなかったんですか??」

むぅ、と拗ねながら聞くと、夏目さんはくすくすと笑いながら言った。

「前の彼女が、金目当てだったことがあってさ。…亜子はそんな子じゃないと思ってたし、麗奈ちゃんにもそう言われてたけど…ちょっと怖くて」

前の彼女…

そりゃ、付き合ってた人くらい、いるよね…。
少し、ズキズキと痛む胸を隠すように、私は笑った。

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