明日死ぬ僕と100年後の君
有馬は少し保健室で休んだあと、わたしたちが午後の授業を受けているうちに帰っていた。
ひとりで帰ったのかと心配したけれど、タクシーを使ったみたいだと柳瀬くんに聞いて、少しほっとした。
でも、有馬は家でひとりきりなんじゃないだろうか。
有馬の家族はみんな事故で亡くなっている。
お祖父さんは病院で仕事中だろう。
前に聞いた家政婦さんは、有馬を看てくれたりするのだろうか。
部活も休みになったし、有馬の様子を見に行ってみようか。
柳瀬くんなら住所を知っているだろうし。
そう考えていたわたしに電話がかかってきたのは、SHRが終わった直後。
それはおばあちゃんからで、予想外の内容に一瞬頭が真っ白になった。
「ばーさんが死んだよ」
だから真っすぐ帰ってきなさい。
そう告げたおばあちゃんの声は、いつも以上に低く、力なく、萎れていた。
わたしは有馬のことを忘れ、駆けだした。
家に向かって強く引っ張られるように、足をもつれさせながらとにかく走った。