明日死ぬ僕と100年後の君
「聖人のこと嫌いな人? えー……思いつかないなあ。いるの? そんな人。だって聖人だよ?
あんな善意の塊みたいな人を嫌う奴がいたら、そいつこそ悪人だよね」
次の日、クラスメイトに聖人、もとい有馬夕星のことを聞いて回った。
友だちから聞いていた聖人のイメージと、実際に会った本人の印象がずれていたからだ。
もしかして友だちの認識がまちがっていたのかもしれないと、確認の意味で数人に尋ねてみた。
その全員が聖人、有馬夕星のことを知っていて、しかも彼を悪く言う人はひとりもいなかった。
誰もが聖人の人柄や日頃の行いを褒めたたえる。感謝して、心から尊敬している。
まるで本物の聖人と、それを崇める教徒みたいに。
彼の善行を疑う人は誰もいなかった。
それがなんだか気持ちが悪い。不気味だ。そしてこの上なく胡散臭い。
いつかテレビでやっていた、新興宗教やねずみ講のサークルを見ているような気持ちになった。