いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
嵐のような1日だった。
いや違う。
今日はめずらしく海が凪ぎ、穏やかな波の上を渡っていたと思ったのに午後になって怪しい雲が降りてきて、と思ったら急に嵐に見舞われ船が転覆しかかった――そんなアドベンチャーな1日だった。
けれど今は食卓での荒れた波も納まった。
父と母はすでに寝室に引き上げていて、静かに凪いだ夜が訪れている。

風呂から上がってTシャツと薄手のスエットに着替え、洗面所から出る間際に鏡をのぞいて勝子はギョッとした。血流がよくなったせいか額に貼った絆創膏は赤く染まり、受け止めきれなかった血がツーっと眉毛の脇から左頬にかけて垂れている。
これまで鼻血以外で顔から血を流した記憶はない。
勝子は顔を鏡に近づけ、赤くなった絆創膏をはがして傷をまじまじと見た。
「どうした?」
珍しく鏡をじっくり見ている勝子を強が後ろからのぞきこんできた。
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