エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「……聖?」

そんな七瀬さんの発した声に私の視線は七瀬さんの方へ移った。私の目に飛び込んできたのは驚いた表情を見せる彼女の姿。

莉乃(りの)?」

七瀬さんの声に反応するかのように今度は聖さんがそう言って七瀬さんを見つめている。

「驚いたわ。聖がここの事務所で働いていたなんて」

「俺も驚いたよ。まぁ、ひとまずそこの席に座ってくれ」

「あ、うん……」

私の目の前で繰り返される聖さんと七瀬さんのそんなやり取り。どうやらふたりは知り合いらしく、お互いを「ひじり」「りの」と呼んでいたことを考えるとかなり仲が良かったのではないかと推測できた。

「で、では私はこれで失礼します。蒼弥くん、行こうか?」

「うん」

モヤモヤする心の動揺を悟られないように私は平静を装って、蒼弥くんと共にその部屋を出た。
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