エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「蒼弥くん、お絵かき上手だね?」

「うん! えをかくのすき。これこないだのったひこうきと、しんかんせんだよ」

クレヨンを使って書いた絵の説明を一生懸命にしてくれる蒼弥くんが可愛くて思わず笑みが溢れた。それでも胸のモヤモヤは消えなくて、そしてそれが意味する意味も分からなくて、何とも言えない気持ちで過ごした一時間半あまり。



「今日はありがとう。話を聞いてもらえて良かった。聖が相手だったから聞きづらいことも遠慮せずに聞けたし」

「それなら良かった。何か不安があればいつでも連絡してくれ」

「ありがとう。私ね、暫くこっちにいる予定なの。だからそのうちおじさまとおばさまにもご挨拶に行くわ」

「ああ、莉乃が顔を見せてやったら父さんたちも喜ぶと思う」

聖さんと七瀬さんのそんなやり取り。心なしか来た時よりも七瀬さんの表情が柔らかくなった気がする。それとは対照的に私の心の疼きはふたりのやり取りを聞いて増すばかりだ。

「蒼弥のことを見ていただいて本当に助かりました。ありがとうございました」

「いえいえ」

七瀬さんに向かって私は今、どんな顔をしているんだろうか? ちゃんと笑えているのだろうか?

一生懸命、平静を装いながら玄関まで聖さんと共に七瀬さん親子を見送った。
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