エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「さぁ、そろそろ行こうか?」

「え? 聖さんは会場入り十時でしたよね? 私は着物の着付けがあるのでそろそろ出ますけど」

リビングの時計に目をやれば時刻はまだ八時半を少し過ぎたばかりだ。

「紗凪のことを送っていく。一緒に会場入りして紗凪の支度が終わるのを待っているつもりだ」

「そんなに気を遣わなくても大丈夫なのに」

「俺がしたいからそうするだけだ。さぁ、行こう」

正装をした黒スーツ姿の聖さんに私エスコートされて会場のホテルへと向かった。



「ようこそ、東條様。お待ちしておりました」

「今日は宜しくお願い致します」

「はい。スタッフ一同、心を込めてお仕えさせて頂きますので何なりとお申し付け下さいませ」

会場に着くと、見覚えのあるコンシェルジュさんが私たちを迎えてくれた。鼻を掠めるのは館内の至る所に飾られた色鮮やかなフラワーアレンジメントから放たれる甘く高貴な香り。

そう、ここは以前、聖さんと入籍したあの日に聖さんの家族と食事をしたホテルのfleur du ciel だ。
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