エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
先に逸らした方が負けな気がして私は必死に睨み返し続ける。

本心は東條さんの何とも言えない威圧感に負けそうで胸の鼓動が頭にまで響いちゃってるくらい動揺中だったりする。

「ハハハッ! 紗凪ちゃん最高。聖に面と向かって文句を言う人初めて見たわ」

この均衡を破るのは根負けしそうな私なんじゃなかろうか、なんて思い始めた矢先、耳に届いたその笑い声に私の視線はそちらへと動く。

私の目に飛び込んで来たのは、東條さんを指差しながらケラケラと笑う京極さんだった。

「人を指差すな。バカにするのもいい加減にしろ」

「酷い言われようだね。ハハハッ」

「くだらない発言には付き合ってられない。失礼する」

「ちょっと聖、聖狙いの女の子たちがガッカリしちゃうよ」


「そもそも気乗りして来た訳でもない。悪いが席に戻ったら急な仕事が入ったとでも言っておいてくれ。じゃあな」

次の瞬間、そう言って京極さんの制止も聞かずにスタスタと店の出口へと歩き出した東條さん。暴言を吐いた私には目もくれず、もやは東條さんにとって私は透明人間っていう部類らしいが、失礼な奴だ、まったく……なんて心の中で盛大に叫んでみたりする。

「あぁ。拗ねちゃった」

東條さんの遠くなる背中を見ながら私の隣にいる京極さんが楽しげにそう呟いた。

「なんか私のせいですみません」

「いいの、いいの。聖がヘソを曲げるのはいつもの事だからさ」

「そう、ですか…」

「そうそう! だから気にしないで、みんなのところに戻ろうか?」

「あ、はい。そうですね……」

京極さんに促されてみんなのところに戻ることにした。
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