エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
凛華たちがいる場所へ戻り、冷静になってみれば東條さんに啖呵を切ってしまったさっきの自分の愚かさに後悔の念が襲ってきた。

東條さんを狙っていた後輩女子ふたりは東條さんが帰ったことを知ると酷く残念がった。

が、なんと言う切り替えの早さだろう。私が推測するに次のターゲットはイケメンカリスマ美容師と京極さんのふたりに移ったように見える。そんな様子を見てさっきの京極さんの言葉を思い出した。

上辺しか見ていない。確かに京極さんの言う事は一理あるのかもしれない。

「紗凪ちゃん? さっきからずっと考え事してる感じだけど、どうした?」

「え?」

「もしかしてさっきの……」

「さっきのって何ですか? 気になるー!」

すかさず私が今最も突っ込んで欲しくないそこに触れたのは京極さん狙いだろうと思われる後輩女子のひとりで、興味津々な表情で目の前の京極さんを見つめている。

「実はね」

まさかさっきの痴話喧嘩のことを暴露するつもり? ハラハラしながら悪い笑みを浮かべる京極さんを見つめる。

「さっき外の廊下ですれ違った時に具合悪そうにしてたから無理してるのかなって思ってね」

「そうだったんですね。冴草さん大丈夫ですか?」

京極さんの発言を信じた後輩女子が挙動不審な私の顔を覗いた。

「あっ、えっと……ちょっと飲み過ぎたみたいで先に帰らせてもらおうかな」

私に訪れたピンチからのチャンス。ここを抜け出す口実ができたことにホッとした私がそこにいる。
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