エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「東條さん……」

「どうした?」

「私……この契約結婚をお受けします」

もしかしたら私は流されているのかもしれない。でも、お互いにメリットのある契約結婚。期間は長い人生で考えればたったの一年に過ぎない。

それで実家と妹を救えるのならばこのくらいの犠牲は致し方ない。それが私の答え。

「契約成立か。君ならそう言ってくれると思ってたよ」

「まんまと東條さんの話術に乗せられた感じですけどね」

「まぁ、互いに守りたい者が守れるのだからそれでいいだろう? 宜しく頼むよ、冴草紗凪さん」

「こちらこそ宜しくお願いします」

互いに手を差し出してがっちりと握手を交わした。それは契約成立の証し。

生まれも育ちも性格も、考え方も価値観も全く異なる東條さんと私は、どこまでいっても理解しあえることはないだろう。そこに愛なんて生まれることはない。

偽りの契約結婚。
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