エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「紅茶に含まれるテアニンにはリラックス効果がある。住むところが変わると気疲れも多くなるだろう」

「なんだが色々凄すぎて改めて環境の違いを目の当たりにしてる感じです」 

東條さんから勧められた紅茶を口にしてみる。茶葉の香りが口一杯に広がり心がすっと澄んでいく気がした。

「実家に暮らす訳でもないしここには君と俺のふたり。気を遣う必要はない。あの日のズバズバ物を言う威勢のいい君はどこにいったんだ?」

「それは……」

庶民の私からしたらこんな環境で生活するって言うのに戸惑いがあるっていうのはあるけど。それ以上に東條さんに何処か引け目を感じていたりする。

実家への融資もそうだし東條さんのような家柄が良くて高学歴でイケメンでスタイルも良くて、女なら誰もが憧れる男性の横に私みたいな何の取り柄もない庶民が並ぶなんて不釣り合い過ぎて恥ずかしい。

「融資の事やら契約やら、そんな事は気にしなくていい。君は君のままでいればいいんだ」

「東條さん……」

こんなにも私が考えている事、思っている事を汲み取れる東條さんは凄い。弁護士という職業柄なのか。

クールで冷徹に見える東條さんだけど本当は誰よりも他の人に目を配っていて、気遣いがちゃんとできる人なんじゃなかろうか。
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