エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
それから緊張しつつも和やかに始まった食事会。食前酒のシャンパンで乾杯をして、アミューズに続いてオードブルが運ばれてきた。

彩り鮮やかな野菜のテリーヌにコンソメジュレとキャビアが添えられた目でも楽しめる美しい逸品。ナイフとフォークを使い、上品に口に運ぶ。野菜本来の繊細な味にジュレとキャビアがマッチして思わず笑みが溢れた。

「ところで聖、結婚式はいつするんだ?」

だが、そんな唐突なお義父さんの質問に思わず手が止まった。これはあくまで契約結婚な訳で結婚式を挙げる予定などないのに。期限付きの結婚だと知らないお義父さんは当たり前のようにそんなことを聞いてきた。

「あなた、まだ今日籍をいれたばかりなのよ? そんなに焦らなくても」

「そうよ、お父様。今日はお祝いの席なのに」

「今、私は聖と話しているんだ。聖も今年で三十歳になる。この結婚を機に私の後を継ぐ体制を一刻も早く作らねばならないのだよ」

お義母さんと美玲さんの言葉をシャットアウトしたことで和やかな雰囲気が一転してピリピリしたムードが漂い始めたその場。

さてさて聖さんはどんな風にこの質問を乗り切るのだろうか? チラリと隣にいる聖さんに視線を送る。
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