綺麗なブルーを描けません
「…ほら、彼女も凪よりオレがいいって」

すぐ、そばで、乾いた声が囁く。

肩から手が離されて、今度は手首を掴まれる。

と、ふいにその力が剥がれて、お兄さんが床に転んだ。

柊くんが、反撃したのだ。

片手で額を押さえている。

さっき、切ったんだ。

血が、怒っている柊くんの顔に伝い落ちている。

その、険しい目つきと相まって、ゾクッとするほどかっこいい。

…いや。そんなこと考えてる場合いじゃないんだけど。

「…帰ろう」

その様子で言われると、逆らえない。

あたしは頷く。

チラリと見ると、床に転がっているお兄さんのほうは、雪奈さんが心配そうにのぞき込んでいる。

まだ、手が後ろ手に縛られたままだ。

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