綺麗なブルーを描けません
ああ、このヒト…

離せって言ったことを、怒ってるんだ。

瞬間的にわかった。

…しかも、ものすごく怒ってる。

でも、ゆっくりとその怒りを飲み込むと、

ニッと笑った。

「凪、雪奈連れて帰っていいぞ。オレ、この子もらうから」

このヒトの中で、あたしが、柊くんを苦しめるためのただの道具から、

自分の直接的な恨みの対象になった瞬間。

まだ、あたしの肩を力いっぱいつかんでて、しかも至近距離で。

柊くんのうめく声がして、あたしはその腕を振りほどこうとした。

でも、かえって捕まって、

お兄さんは笑みを浮かべたまま片手を離して、指をあたしの頬に這わせた。

思わず、反射的にニラみ上げる。

多分、このヒトは、自分へのこういう反抗的な態度が、ものすごく許せないヒトなんだと思う。

でも、あたしだって、コイツは大嫌いだ。

なのに、力に屈する。
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