綺麗なブルーを描けません
思考出来ない。

呆然と、まだ、すぐそこにいる、柚葉さんを眺めている。

すごーく、静かな目で、こっちを見てる。

この表情、たまらない。

こんな、優しい目、しちゃうんだ。こういう場面では。

この10年くらいの間に、どれだけの人に、何回これをやったんだろうな。

柚葉さんの、こういう、良く言って恋愛体質なところも、本当はあんまり好きじゃない。

…好きじゃないとこ多いな。なのに、ひつこく好きなんだ。

「...ごめん。...エマ?」

真顔と、その、少しかすれた甘い声。

これが、好みすぎるから。

だから、他のとこはどうでも良くなるんだろうな。

「...オレ、今彼女いないけど、なってみる?」

思考の止まる、その表情と声、やめてほしい。

ちょっと待って、返事しちゃダメだぞ。

何でだ?

ほら、きっと、こんなに長く、このヒトのそばにいられたのは、友達だったからだ。

じゃなかったら、とっくに『いらない』って、なって会えることもなくなってる。

で、この『いらない』が、もしかしたら、あたしが思うのかも知れないって恐れもある。

おんなじ彼女と長続きするのを見たことがないから。

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