センパイの嘘つき
「…モヤモヤする」
「お?さては恋か?」
うっかり口に出してしまった言葉を逃さんとばかりに隣を歩く咲に突っ込まれる。
「ありえないから。」
私は即答して、ため息をつく。
「またまた、先輩といい感じなんでしょ?」
ニヤニヤする咲の言葉に、頭の中に昨日の光景が浮かぶ。
触れそうで触れない距離。熱い体。先輩の、甘い匂い。
「そういうんじゃ、ないし」
「とかいって、赤くなってるよー?」
「なってないし。」
これは、そう。保健室が暑かったから。ストーブ効きすぎで。
「あ、ほら。先輩だよ?」
渡り廊下の向こう側。先輩が、数人の女子とこちらに向かって歩いてくる。
私はなんとなく目線を下に向けて、視界から先輩を消す。
なにもない、のに、心臓がうるさくなる。
先輩との距離が縮まるにつれて、自分の腕が震えだすのが分かる。
横を通る、高い笑い声。女の人の香水の香り。
ほら、なにも