バレンタインは狡く、賢く。

ーーバレンタイン当日

放課後、可愛くラッピングしたチョコレートを持って校内を歩いているとお目当ての人を見つけた。先生はチョコレートを持ってきてた女子生徒を見つけて注意しているとこだった。でも先生はチョコレートを取り上げることはせず、「頑張れよ」なんて頭を軽く叩いて笑って見送る。

(何、その笑顔!頭ポンッとか羨ましすぎるんですけど!!本当先生ってば天然タラシだわ。)

嫉妬で騒ぐ心をなんとか落ち着かせ、私はチョコレートを目立つように持ち先生の前を通りすぎる。

するとやっぱり気づいた先生が私を呼び止めた。

「飯田!ちょっと待て。」

先生が呼び止めてくれたことにホッとしながら、その事を悟られないように振る舞う。

「佐藤先生、なんですか?」

「なんですか?じゃないだろ。それ、チョコレートだろう。うちの学校が持ち込み禁止になってるの知ってるだろ」

ええ、もちろん知ってますとも。

「あぁ、そうでしたね。それじゃあ先生、これはお渡しします。」

私があまりにもあっさり持っていたチョコレートを渡すので、ちょっと戸惑ったらしい先生は

「え?いやいや!せっかく作ったんだろ?今日のところは見なかったことにしてやるからちゃんと渡してこいよ!ただ、来年は持ってくるなよ?」

と渡したチョコレートを返そうとしてくる。
< 2 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop