天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



「でも……天ヶ瀬くんは唯乃さんのこと大切にしてると思いますよ。きっとわたしなんかよりずっと」


こんなことわたしが言うのもおかしな話だけれど。


「なにそれ……っ。わたしがどんな気持ちでいるか知らないくせに……っ」

「それは……」


「ゆづくんはたしかに唯乃のこと大切にしてくれてるし、そばにいてくれた。……毎晩唯乃が寂しくなったら、抱きしめて眠ってくれて。そのときは愛されてるんだって思ってたのに……」


話を聞いていると、どうして唯乃さんがこんなに感情的になるのかが、わからない。

だけど。


「ゆづくんは……唯乃を抱きしめながら、唯乃じゃない子の名前を呼ぶんだから……っ」

「え……?」


「優しく抱きしめながら、愛おしそうに……あなたの名前呼びながら抱きしめられるなんてもう嫌なのよ……っ」

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