守りたい人【完】(番外編完)
びしょ濡れになりながらも、必死に籠を抱えて山を駆け下りる。
確か、この道を真っ直ぐ降りたら家に着くはずだ。
はぁはぁと、熱い息が聞こえる。
恐怖に駆り立てられて、今にも泣きだしそうになる。
絶え間なく鳴る雷の音と、視界を悪くする豪雨が不安な心を掻き立てる。
もつれそうになる足を必死に動かして、暗闇の中を我武者羅に走る。
それでも。
「え、わ、きゃぁっ!」
突然木の根に足を取られてバランスを崩し、走っていた勢いのまま前に倒れこんだ。
その瞬間、泥水がバシャっと顔にかかり、体中に痛みが走る。
「いったぁ……」
籠を両手で持っていたからか、受け身を取る事ができなかった。
痛む体を抑えて、泥だらけになった体をノロノロと起こした。
それでも、頭を打ったのか一瞬眩暈がして世界が大きく揺れた。
だけど、早く帰らなきゃと思い勢いよく立ち上がった、その時――。
「痛っ」
突然刺す様な痛みが右足に走って、そのまま蹲る。
恐る恐る足を見ると、膝から血が出ていた。
でも、恐らく問題はこれじゃない。
きっと、挫いたんだ。