守りたい人【完】(番外編完)
「いつもトゲトゲしてて、ハリネズミみたいでした」
「その例え、どうなの」
「適格だと思いますよ? いつも周りを敵みたいな目で見てて、何を話してもケンカ腰で、傷ついた一匹狼みたいでした」
そう言った私の言葉に、朝比奈さんは自嘲気に小さく鼻で笑った。
そんな表情も出会った頃は見せてくれなかったのに、ここ最近では少しだけど笑ってくれるようになった。
感情表現が豊かになってきたように思う。
それが、嬉しくて堪らない。
「みんな変わってきたんですね。もちろん、いい方向に」
「変わってないのは、あんたの卵焼きの味だけだな」
「え、まだ不味いですか!?」
「不味いわけじゃない。ただ、固い」
「え~、じゃぁ、もっと練習します」
「そうしろ」
「っていうか、あんたじゃなくて、ちゃんと名前で呼んでくださいよ」
「なんで」
「山に助けに来てくれた時は『志穂』って言ってくれたじゃないですか」
「――」
「私、ちゃんと覚えてますからね!」
あの時はパニックだったから反応できなかったけど、よくよく思い出せば、あの時初めて名前で呼ばれた。
あれから、何度思い出し笑いしたか分からない。