守りたい人【完】(番外編完)
「今度、朝比奈さんにも見せてあげなきゃですね」
「え?」
「あの人、不愛想だけど、こういうの好きだと思うんですよ」
「――」
「鍛冶君が来る前も、塞ぎ込んでいた私を元気づけようと夜桜を見せてくれたんです」
「へぇ」
「意外ですよね? でも、勘違いされやすいだけで、本当は優しい人なんですよね、朝比奈さんって」
そう言って、口元に笑みを浮かべる。
朝比奈さんを思い浮かべるだけで、胸がポカポカと温かくなる。
あまりにも綺麗なこの景色を、あの人にも見せてあげたいと思った。
驚く顔を見てみたい。
きっと、素っ気無い言葉しか言わないだろうけど、喜んでくれるはずだから。
「きっと、喜びますよ」
ふふっと笑いながらそう言って、再び鍛冶君の方に視線を向ける。
すると、どこか表情を無くした鍛冶君が私を見て目を細めた。
そして、ゆっくりと逃げるように視線を足元に向けた。
いつもと違うその様子に首を傾げる。
どうしたんだろ?