守りたい人【完】(番外編完)
私が確信したのを感じ取ったのか、鍛冶君がゆっくりと私の手を握った。

暖かなその手に、包まれるように握られる。


「そして、ここに来たんや」

「――」

「どうしても、志穂ちゃんに会いたかったんや」


その言葉に、その表情に、胸が締め付けられる。

そんな事、全然知らなかったから。


一気に恥ずかしくなって、逃げるように視線を伏せた。

それでも、鍛冶君は逃がしてくれなくて、握っていた手を離してそっと私の両頬を大きなその手で包んだ。

導かれるように視線を上げると、熱を帯びた瞳が私を真っ直ぐに射った。


「知れば知るほど、志穂ちゃんを好きになった。側にいればいる程、自分のものにしたくなった。――例え、その心が俺に向いてなくても」

「え?」

「好きなんやろ? 朝比奈さんの事」

「――っ」

「隠さんでもええ。見てれば分かる」


ドクンと跳ねた心臓が胸を締め付けて痛い。

悲しそうに作り笑いを浮かべて笑う鍛冶君の顔を見るのが、辛い。


それでも、ここで嘘をつくわけにはいかない。

真っ直ぐに私に向かってくる鍛冶君に、それは失礼だと思うから。
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