クールな御曹司の契約妻になりました
「よく眠れた?」
背中越しに千裕さんは私に尋ねる。
昨夜、一人で怯えてみたり、千裕さんに手を繋がれたりして、眠れないって思っていたのに、蓋を開けてみれば、自分でも驚くほど安眠できた。
少しだけなんだか悔しく思いながらも、私は背を向けたまま、小さく頷く。
「それなら、今夜も俺と一緒にこの部屋で眠ればいい」
息を漏らすように少しだけ笑った千裕さんは、本気とも冗談とも取れない口調で私の背中に声をかける。
「そんな冗談言わないでっ……」
これはきっと悪い冗談だ。
そういうことにしたくて、勢いよく振り向いて千裕さんに乱暴に言葉をぶつけようとしたのだけれど、私は思わず口を噤む。
だって、千裕さんの瞳は真剣そのもので、千裕さんの言葉が冗談ではないってことを教えていた。
「本気だから」
真っすぐに伝えらえた千裕さんの言葉を私は返事をすることも忘れて見つめてしまっていた。