クールな御曹司の契約妻になりました

「香穂、すまないが少し萌と話をしてくる。すぐに戻る」

ぼんやりと萌さんが歩いて行った方向を見ていると、きっとただならぬ萌さんの気配を察したような千裕さんが私に表情一つ変えずにそう言った。


「はい。では、このあたりで待っていますね」

これが契約だってことも、恋愛なんかではないってことも分かっているのに、千裕さんの言葉になんだか少しだけ心がひり付く。

だけど、私はそんなことを言う資格なんてないのだから、余裕たっぷりに微笑んで見せる。


「香穂、大丈夫。萌としっかりと話をつけてくるだけだ」


一瞬、ほんの一瞬だけ眉間に皺を寄せ私を心配するような目つきで見た千裕さんは私を安心させるように頭に大きな手をのせ、暖かな笑顔で微笑む。


頭にのせられた手は暖かくて、それだけで安心感が生まれるのはきっと気のせいではない気がする。

だけど、これじゃあやっぱり私のことなんて子ども扱いだ。



そんなことを考えながら萌さんを追う千裕さんの後ろ姿を見送った。

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