甘い脅迫生活
何がきっかけかなんて分からなかった。
「きっと仕事関係の集まりかなんかの時だったんでしょうね。たまたま、ウチの親とその子の親がその場にいた。子供を連れての軽い集まりだったんだと思います。パーティーと呼ぶほど堅苦しくない、そんな。」
その時の私は、かっこいいお母さんに憧れていて。かっこいいをどう主張するか悩んで、結局見た目から入ることにした。ボーイッシュに髪を短くそろえて、服装も少し男の子っぽくして。そういうのがかっこいいってことなんだと思っていたおバカだった。
「そのせいでなんでか、間違えられちゃったんですよね。」
咄嗟の出来事だった。一瞬目の前が暗くなったと思った瞬間、凄く強い力に包まれて。乱暴に、物のように扱われた私の身体は、ところどころに擦り傷ができていた。
「でも私は結局女の子なんですよ。すぐにバレちゃいました。」
おじさんの顔が、少しずつ恐怖に歪んでいく。まるで化け物を見るような、そんな表情。
「用がなくなった私は、犯人の顔を見ている。当たり前に”処分”されそうでした。いや、されたのかな。」
ナイフが刺さった途端、激痛が走った。刺された部分はドクドクと脈打って、まるでそこに血管が集中しているかのよう。火が点いたように熱いのに、血が流れ出るにつれ身体が冷えていったのを覚えている。