甘い脅迫生活






「何度も言いますが、デマです。社長なんて、とんでもない。」

「へ?」


呆れ返ったような声に、思わず顔を上げると、小竹専務は私に悩殺ウインクをした。


う゛、なんて、胸に手を当て、古いリアクションをしてしまいそうなほど、小竹専務のその行動は自然で、嫌味がなくて。


隣で笑顔のままピクリとも動かない優雨と同じ種類の人間なんだなと苦笑いしてしまう。



まっすぐ、前を向いた小竹専務は、笑みを浮かべていて、相変わらず綺麗なのに。


「仕事では最高の男だと思います。しかしプライベートでは、奥さん狂のただの変人です。」


辛辣な言葉を吐く。


しかも、その人の披露宴で。なのに、なぜか頭に来ないのは、辛辣な言葉の端々から、小竹専務が優雨を信頼していると、伝わってくるから。



「こんな変人、扱えるのはこの美織さんだけです。ほんとに凄い。尊敬しちゃう。」

「……。」


それも間違っているような気がしてきたけど、拳を作ってリスペクト!みたいにされても、この場でどうリアクションを取っていいのか、分からない。


苦笑いを返すだけの私から何を受け取ったのか、小竹専務は深く頷いてみせた。



優雨が変わってるというけれど、この人もかなり、変わってる。



それでも仕事はできて、この美貌。本当に素敵な女性だ。


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