甘い脅迫生活
目の前に並んでいるお皿。この間の顔合わせで食べた料理が一部含まれている。
例によって、優雨の合図で入室してきた山田さんが提示してきた私たちの結婚式についてのあれこれ。
式の参列者から、食事のメニュー、引き出物の候補リスト、などなど、あとは私が決めるだけとなっていた。
こういうのは自分で一からやりたい人もいるはず。それなら言ってくれれば、全面的にサポートすると言われた。
勿論、私がそういうのにこだわりがあるはずもなく、山田さんが用意したものの中から優雨と相談しながら決めたわけだけど……。
顔合わせの時に特別に作ってもらったものだと聞いていた料理がもう商品化されていることに、驚いたものだ。
聞けば専務はあの場で、あの料理のどれが商品として成り立つかどうか、精査していたらしい。全部、美味しそうに食べてたよね?信じがたいことだ。
だけど、フルコースで出ていたたくさんの料理から、商品化できたのは2品だけ。
コスト面や、材料の関係。それらから考えると、それが限界なのだという。専務は食事を楽しみながらも経営の面から冷静にそれを判断していた。
綺麗なだけじゃなく、仕事もできるなんて。本当に、優雨に似ている。
「事の発端は、私が社長のマンションから出てきたという目撃情報からでした。」
溜息交じりの小竹専務の声に、我に返った。
そんな目撃情報が?やっぱり噂は間違ってなかったのかな。
沈んでいく気持ちに反して、目の前の料理はキラキラと光って見える。ああ、なんだか私、情けないな。ますます気持ちが落ちていく。