甘い脅迫生活





すると、突然。社長の笑い声が止んで、目の前に人の気配を感じた。


驚いて見上げれば、社長が不敵な笑みを浮かべて私の前に立っている。



「脇坂美織、24歳。幼い頃、実家が会社を経営していたが、倒産。多額の借金が残るも、親子3人、必死に働いて返済し続け、借金は残り1324万9200円になっている。」


社長が挙げ連ねるのは、私の残念な人生。100円単位まで読み上げてくださるとは。



「身長は162センチ。体重は、」

「あーーー!」

「知ってるが知らないことにしてやる。」


会社の健康診断を毎年受けている身としては、明らかに身長体重は知られているけど。体重だけはちょっと乙女的にNGでお願いしたい。


「借金返済のため、西園寺フードの規則を破り、現在副業を持つ。」

「っっ、」


少しずつ、私を追い詰めるように近付く距離。社長の両手は私を挟むようにソファーの背もたれにかけられ、顔はすでにキスができそうなほど近い。


楽しそうに細められた目はまっすぐに私を見下ろし、社長の飲んでいた紅茶の香りが鼻を掠めた。




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