甘い脅迫生活





「今すぐ好きになれとは言わない。だから今は、脅してやろう。」

「はぁ?」



間近で微笑むとても整った顔は天使のように綺麗なのに悪魔のようにも見え、社長の口から出た脅す、というワードが更に私を混乱させる。



「副業をバラして職を全て失うか、俺と結婚して今のまま働くか、どちらか選べよ。」

「はぁ!?」


私を笑顔で脅すのは、冷血で絶対的な王様と噂される、イケメン社長。


「そんなのっ、」

「無理とは言わさない。」

「っっ、」



突然切り替わった真剣な表情は、まっすぐに私を見ている。



「俺と、結婚しろ。」



その”命令”は、脅迫。それなのになぜか、極上に甘い。



誓えとばかりに私をジッと見る社長に、返す言葉は決まってる。それなのに口が動かない。



圧倒される。社長の存在そのものに。


それでもやっぱり、私は、そんな馬鹿な理由で結婚なんてしたくない。



「あの、無理です。」



言葉がスッと出てこないのは、どこかでこの人の存在に負けてしまっている自分がいるからなのかもしれない。それに、すごくそれっぽくないけど私は一応脅迫されている。なんで私なのかは分からないけど、脅迫してまで迫っているなんて何か理由があるんだろう。


だからこそ、断るとどうなるか、なんて……

想像がつかなすぎて、凄く怖かった。




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