甘い脅迫生活
「仕事は今のまま続けていいよ。ただ、俺の妻として、出席しなければならない行事は結構ある。それはこれから両立について細かく決めていく必要がある。」
敬語に戻ってる。それはどうでもいい。だけどボーッとしていて思うのは……
「もちろん、君の気持ちが追い付くまで手は出さない。アプローチはするけどね。だけど誓うよ。俺は、美織の気持ちを最優先に、夫として尽くすつもりだ。」
これが初対面で、脅迫じゃなければ、これほどいい条件の結婚はないということ。
夫の職業は申し分なし。顔よし、性格、は分からないけど、妻の気持ちを最優先にしてくれるという志は大したものだ。
だけど私の勝手な偏見では、社長業、しかも西園寺社長クラスの大金持ちなら事実上の妻は5人はいそうだ。それだけ、一途とはかけ離れた人間に見えてしまう。
「もちろん、浮気なんてありえない。仕事のパートナーに女性はいるが、君に後ろめたいことなんて一切ないよ。」
しかもこの、天使のようなスマイルで言われてしまうと更に好印象で、だんだん社長のことが理想の結婚相手に見えてきた。
「お断りします。」
「チッ、」
だからといって、OKするわけがない。