甘い脅迫生活
ベッドも起きたままだし、何より脱ぎ捨てられたパジャマが放置されている。
洗面所だって。今日夜中に洗濯するつもりの3日分の汚れ物が放置されてるし、ここ最近色々あったせいで掃除もできていない。
もはやこれは恥を通り越して、この場で死ねる。
「あの、山田さん。」
「はいなんでしょう?」
うなだれた私は、葛藤した。ここは急病と嘘をついて仕事を休んで自分で引っ越し準備をすべきなのか、それとも、もう恥は捨てて任せて仕事に行くのか。
「……行ってきます。」
「はい。行ってらっしゃいませ。」
そこをほぼ考えずに仕事を優先してしまう自分が、大変憎らしいけれど、かなりの数の人がすでに私の部屋に入ってしまっているわけで。
手遅れならば、私は仕事を選ぶ。
「奥様。」
トボトボと歩き出した私を、山田さんが呼び止める。
振り返った私に、山田さんはニヤリと笑った。
「お仕事、お休みすることも可能ですが?」
その試すような言い方。ほんとこの人、嫌な感じ。
「結構です。」
今日の仕事で、私がいなくちゃいけない理由なんてないだろう。さえちゃんは優秀だ。だから誰かが教えれば、私の代わりなんていくらでも勤めてくれる。
だけどそうじゃない。
私しかできない仕事なんてなくても、私はやるべきなんだ。