甘い脅迫生活




お金を稼ぐということは、とても大変なこと。


世間で働く大多数の人がきっと、”変わりの利く”仕事をしている人たちだろう。


それでもその仕事を自分がやっているという意義を見つけるのかどうか。それは自分次第だ。


私は、私がやるべき仕事をしていると思っている。仕事は楽しいし、辛い。お金の為もあるけれど、私は今の仕事が好きだから、働いているんだ。


だから突然、家がこんなことになってるとしても私は仕事を休んだりはしない!


鼻息荒く歩き出した。もう、振り返りはしない。本当の理由の大半は、あの場で羞恥に晒されるよりは知らない内に恥をかいていた方がいいと咄嗟に思ったからだとバレないように。




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「はぁ。」


静かな室内。もう秋に入ってきて肌寒い。経費削減のため、エアコンは真冬まで付けない。ぶ厚めのソックスやひざ掛けでなんとかならなければ、所長を通り越して本社まで抗議してやりたいくらいだ。


大企業のくせして、ケチケチしてる。寒いのが大嫌いなさえちゃんが黒い笑顔でそう毒づいていた。


さえちゃんは今、配送の荷積みを手伝っている。私はというと、ほんの少し残っていた事務作業を、定時に帰るべく急いで処理していた。


所長が所要で出ていて、今は室内に私一人。だからか一旦手を止めて、ご自由にと汚い字で書いていた誰かのお土産のおかきを頬張りながら、熱いお茶の湯気を見つめていた。



どうやら、最近の夢のような日々はやはり夢ではないらしい。


夢のような、といっても悪夢のような、に置き換えてもいいほど。


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