甘い脅迫生活




夢だとしたら夢らしく、素敵なところだけ見たいものだ。


まず、山田はいらない。なにあの鬼畜。社長より手ごわい。


そしてあの社長のヘラヘラ顔もムカついてしょうがない。


有無を言わせない、強引な手段を使っておきながら。


「……、くあっ、」


頭を抱えた。



『役所に敢えて一緒に行ったのは、俺と結婚したんだと自覚してほしかったんだ。』


山田さんの美味しい料理を食べた後、きちんと家まで送ってくれた社長が、別れ際に言った言葉だ。


「自覚って、なによ。」


社長の行動から、表情から、端々で伝わる感情。


そんなはずないのにと思うのに、そうとしか思えない。


うぬぼれるなと自分を戒めても、子供のように笑う社長の笑顔が頭にこびりついて離れなかった。



山田さんは、いいや。どの場面を思い出しても腹が立つ。



社長だけだったら私は、この結婚を断れていたのかもしれない。社長はどこか、強引さに欠けていた。いや、強引、なんだけど……。


私の本当に嫌がることは、しない気がする。なんとなく。



だからかな。山田さんに任せたのは。


私が馬鹿なことに結婚を承諾してしまったあの日、最後の決定打を決めたのは、社長ではなく山田さんだった。




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