甘い脅迫生活




『家事ですので、時間給にするのはなにかと難しいですよね。なのでここは日給とします。1日5千円。もちろん、休みなどなく支給いたします。主婦の方の労力を考えると少々お安くなっておりますが、あくまで副業の範囲内でかつ、奥様の性格も考えた上での算出です。』



そう言われて妙に納得してしまった自分がすこぶる嫌だった。確かに、1日1万円だと言われたら、気負ってしまって家事に力を入れ過ぎてしまうだろう。


私の性格上、仕事と家事、そのどちらもを全力でしてしまうこともあり得る。別に手を抜くわけじゃないけど、少々気を張らないでやることも私には必要だった。


その点、山田さんの提案したこの”副業”は、自分のペースでそこそこの収入が見込める。それに、家事という行為が給料で買われていると思えば、まだ社長の存在を完全に受け入れられていない私にはとても助かる。


『名目上、社長からはお小遣いとして奥様の通帳に振り込んでいる、ということにしておきます。もし万が一どこかのクズが痛くもない腹を探ろうとすると困りますので。』

『……。』


一瞬、ダーク山田が顔を出したような気がしたけど。


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美味しい転職先まで紹介してくれた山田さんの口車にまんまと乗せられた私は、悪魔に魂を売ってしまった、というわけだ。


今更後悔しても後の祭りだけど。




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